• 高度脳卒中センターの活動

    一次脳卒中センター

     高齢化に伴い脳卒中は増加してきており患者数は250万人以上にのぼり,年間約12万人が脳卒中で亡くなっています.また,寝たきりや要介護の原因として最も多い疾患であり喫緊の課題となっています.2019年12月に脳卒中対策基本法が施行され,日本脳卒中学会と自治体が協力して診療体制の整備も進められています.脳梗塞の急性期の治療は血栓溶解薬rt-PAを静注して閉塞した血管を再開通させる治療法の有効性が確認され,発症3時間以内という時間制限も発症4.5時間に延長されました.ただし,rt-PA静注療法が適応となるのは脳梗塞の患者の10%以下という実情もあり,救急搬送や受け入れ体制が問題となっています.その取り組みの一つとして一次脳卒中センターPrimary stroke center (PSC)が設定され,島根大学病院も認定されました.PSCの認定条件は次のようになっています.

    1. 地域医療機関や救急隊からの要請に対して、24時間365日脳卒中患者を受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師が、患者搬入後可及的速やかに診療(rt-PA静注療法を含む)を開始できる
    2. 頭部CTまたはMRI検査、一般血液検査と凝固学的検査、心電図検査が施行可能である
    3. 多職種からなる脳卒中チームと専用の病床を有する
    4. 脳卒中診療に従事する医師が24H/7D体制で勤務している
    5. 脳卒中専門医1名以上の常勤医がいる
    6. 脳神経外科的処置が必要な場合、迅速に脳神経外科医が対応できる体制がある
    7. 機械的血栓回収療法が実施出来ることが望ましい
    8. 実施できない場合には、血栓回収脳卒中センターや包括的脳卒中センターとの間で、機械的血栓回収療法の適応となる患者の緊急転送に関する手順書を有する
    9. 定期的な臨床指標取得による脳卒中医療の質をコントロールする

     島根大学は血栓回収療法を施行できる脳神経血管内治療専門医が4名在籍しており,24時間体制で対応しています.地域の先生方とも連携して多くの脳梗塞の患者さんに治療を受けて,回復していただけるように取り組んでいます.

    脳卒中ホットライン

     2019年12月の脳卒中対策基本法が施行され、日本全国どこにお住まいの方でも、同じように脳卒中診療を受けることができるよう診療体制の整備が進められています。当センターでは、脳卒中ホットラインを開設し、救急隊もしくは医療機関からのご連絡に対し、脳卒中診療医が24時間、迅速かつ専門的に対応しております。
     運動麻痺、言語障害、突然の頭痛など、脳卒中が疑われる場合、軽症例でもお気軽にご相談ください。

    脳卒中ホットライン
    090-2750-7524

    (つながらない場合は救急部070-5529-9899)


    診療科間のスムーズな脳卒中対応の連携

     静注血栓溶解(rt-PA)療法や血管内治療など、近年の急性期脳梗塞治療においては画期的な進歩がみられます。これらの治療を行うには、時間的な制約を受けつつも、地域医療機関をはじめ、脳神経内科、脳神経外科、救命救急センターの緊密な協力体制が重要です。後遺症に対するリハビリテーション療法や退院後の自宅療養、回復期病床への転院を円滑に進めるために、リハビリテーション科、地域医療連携センターとの協同も必須です。また、再発・重症化を阻止し、患者さんやご家族の生活の質を改善させるためには、介護福祉機関、市や保健所などの行政機関と連携を図る必要があります。
     当センターでは、脳卒中診療におけるこれらのチームワークをよりいっそう向上させるべく、その原動力となるよう努めております。