• 我々の役割

    ご挨拶

     2020年9月1日に高度脳卒中センターに赴任いたしました林健太郎と申します.熊本県の出身で1995年に長崎大学を卒業しました.長崎大学脳神経外科に進み,大学院では血液脳関門について研究し,2003年から2005年まで米国ケンタッキー大学に留学しました.帰国後は長崎大学脳神経外科にて脳血管障害を中心とした診療に携わり,2015年から佐世保市総合医療センターで長崎県北部の地域医療を担いました.高齢化に伴い脳卒中は増加してきており,死亡率の高さと後遺症や寝たきりの原因として喫緊の課題となってきています.2019年12月に脳卒中対策基本法が施行され,脳卒中学会と自治体が協力して治療体制の整備も進められています.その中で島根大学に高度脳卒中センターが開設されたことは国立大学でも画期的なプロジェクトと言えます.
     高度脳卒中センターのスタッフは副センター長兼講師を脳神経内科から迎え,2021年4月からは脳神経内科と脳神経外科から助教2名が加わり,専任のスタッフは4名となっています.さらに脳神経内科と脳神経外科の若手の先生方を中心に兼任として構成していただき,全体で20名体制で日々の診療に取り組んでいます.脳神経当直体制を敷き,脳卒中ホットラインを開設し,次第に脳卒中の救急搬送も増えてきています.
     脳卒中の急性期治療は血管内治療の進歩に伴い,目覚ましく発展してきています.救急搬送から緊急治療,入院での治療,そして回復期リハビリテーションといった医療連携が必要となります.皆様方のお力添えいただきながら脳卒中診療の活性化,さらなるレベルアップを図りたいと考えています.また,県内の離島や遠隔地の診療にもスマートフォンアプリやドクターヘリを活用して連携すべく準備を進めております.診療現場や研究会などで皆様方にお目にかかれるのを楽しみにしています.どうぞよろしくお願いします.

    2021年6月19日
    高度脳卒中センター
    教授 林 健太郎



    安全・的確・迅速な脳卒中診療の実施

     脳卒中診療の基本は内科的治療(薬剤やリハビリテーション)ですが、重篤な場合は外科的介入(血管内治療や開頭術)により劇的に症状が改善することがあります。ただし、外科的介入は効果が大きい反面、治療方法や手術手技が適切でなければ、かえって患者さんの状態を悪化させてしまいます。加えて脳卒中が起こってから時間が経過するほど治療方法も少なくなるため、スピードも極めて重要です。
     当センターは救急隊や搬送元の病院と連絡を取り合うことで到着前から患者さんの状態を把握し、複数の脳卒中診療医と救急医・看護師・放射線技師らが協力し初期治療にあたっています。また当センターに所属する20人余りの脳卒中診療医全員に診療状況・情報がリアルタイムに共有されるため、救急外来の現場で迅速かつ適切な治療が協議、実施できております。
     血管内治療においては県内最多の血管内治療専門医4名(内、2名指導医)によって診断・治療が実施されるため、島根県に多い一般的に治療が難渋する高齢患者さんにおいても良好な治療成績を収めております。
     開頭術も世界トップレベルの開頭手術専門施設で研鑚を積んだ医師が診療にあたっており、予後不良とされる高齢・重症のくも膜下出血患者さんの治療成績も飛躍的に良くなっております。

     脳卒中は初期治療が患者さんの「その後」を決めてしまいます。少しでも患者さんが発症前と同じように生活できるよう、安全・的確・迅速な脳卒中診療に全力を尽くしてまいります。

    2021年6月19日
    高度脳卒中センター 一同